機材関係

BOSS DI-1完全解説|DIって何をする機械?接続方法・スイッチ・ファンタム電源まで全部わかる

ライブハウスやレコーディングスタジオに行くと、かなりの確率で見かける小さな箱があります。

BOSS「DI-1」

ベースを持ってPAさんのところへ行くと、

「DIに挿してください」

キーボードをセッティングすると、

「DIからもらいますね」

と言われたりします。

ところが、

「そもそもDIって何をしているの?」

と聞かれると、意外と説明するのが難しい機材でもあります。

今回は定番中の定番、BOSS DI-1を題材に、

  • DIは何のために必要なのか
  • INPUTとPARA OUTとBALANCED OUTの違い
  • PADはいつ使うのか
  • GND LIFTとは何なのか
  • PHASEを反転させる意味
  • ファンタム電源とは何なのか
  • ギター、ベース、キーボードではどう接続するのか
  • BOSS DI-1以外を選ぶなら何がいいのか

まで、現場目線でまとめてみます。


そもそも「DI」とは何なのか?

DIは一般に「Direct Injection」あるいは「Direct Input」などと呼ばれる機器で、簡単に言ってしまえば、

楽器の信号を、PAミキサーやレコーディング機器へ送りやすい信号に変換する装置

です。

もう少し正確に言えば、主な仕事は

高インピーダンス →
低インピーダンス

そして

アンバランス → バランス

への変換です。

BOSS自身もDI-1について、電子楽器などのアンバランス・フォーン出力を、ミキサーに適した低インピーダンス・バランスXLRへ変換するアクティブDIと説明しています。


なぜ楽器をそのままミキサーにつながないの?

ここがDIを理解する最大のポイントです。

例えばパッシブのエレキベース。

一般的なシールドで出てくる信号は、

高インピーダンス・アンバランス信号

です。

この信号をそのまま長いフォンケーブルでつないでも、いかにMONSTERのような高級ケーブルでも数十m先のPA卓まで運ぶことは、できません。

ノイズの影響を受けやすくなったり、高域が失われたり、接続する機器とのインピーダンス関係によって音質が変化し、ライブやレコーディングに使えない音になります。

そこでDIを途中に入れます。

ベース

普通のシールド

DI

XLRマイクケーブル

ミキサー

という構成にする。

DIから先を「低インピーダンス・バランス伝送」にすることで、長距離でもノイズに強い状態でPA卓まで信号を運べるわけです。

つまりDIは、

「楽器の信号をPAの世界へ入れるための変換所」

と考えると非常にわかりやすいと思います。


BOSS DI-1とは?

BOSS DI-1は、いわゆるアクティブDIです。

電子回路を動作させるため電源が必要で、

9V電池

または

ミキサーから送られてくる24〜48Vのファンタム電源

で動作します。

周波数特性は20Hz〜40kHz、入力レベルは-20 / 0 / +20dBuの3段階切り替え。

最大入力レベルは+45dBuと、かなり大きな信号まで扱える設計です。

そしてDI-1が長年現場で使われている大きな理由の一つが、

とにかく用途が広いこと。

ベースだけの箱ではありません。

ギター、アコギ、キーボード、シンセ、電子楽器、オーディオ機器、さらに設定次第ではギターアンプなどのスピーカー出力まで扱えます。


DI-1の端子を理解しよう

DI-1を理解するなら、まず信号の入口と出口を理解すると簡単です。

INPUT

ここが楽器からの信号を入れる場所です。

例えばベースなら、

ベース → シールド → INPUT

です。

キーボードなら、

Keyboard OUTPUT → INPUT

となります。

基本的には

「DIに変換してほしい信号をここへ入れる」

と覚えておけばOKです。


PARA OUTは何のため?

DI初心者が混乱しやすいのが、

PARA OUT(Parallel Out)

です。

これは基本的に、INPUTに入ってきた信号をもう一方へ分岐するための端子です。

これがないと、DIにベースを入力して、PAに送るとアンプから鳴らす音がありません。なので、PAに送る信号をもう一つ出すアウト端子です。

例えばベースなら、

ベース

DI-1 INPUT

そこから、

BALANCED OUT → PAミキサー

と同時に、

PARA OUT → ベースアンプ

へ送れます。

つまり、

PAにはDIの音を送りながら、演奏者はステージ上の自分のアンプを鳴らす

ことができます。こうするとPAエンジニアはベースアンプとは独立したベースの信号を受け取れます。

演奏者がベースアンプのEQを変更しても、PAへ送っているDI信号には基本的にその変更が入りません。

ライブPAでDIが重宝される理由の一つです。


BALANCED OUT

こちらがDIとして変換された信号の出口です。

XLRケーブルを使って、

DI-1 BALANCED OUT

マルチケーブル・ステージボックス

PAミキサー

と送ります。

基本的にはPA側が使う端子です。

INPUTが「楽器側」。

BALANCED OUTが「PA側」。

PARA OUTが「楽器アンプ側」。

この3つを覚えるだけで、DIの接続はかなり理解できます。


アコースティックギターにも便利

ピックアップ付きアコギにもDIは非常によく使われます。

アコギ

DI

PA

特にパッシブピックアップなど、出力インピーダンスが高い楽器では、適切な高入力インピーダンスのアクティブDIを使用するメリットがあります。

ポイント

DI-1はPADが-20dBu設定のとき入力インピーダンス4.7MΩなので、楽器を直接受ける用途にも向いています。


キーボードでもDIを使う

これもライブでは非常に多い使い方です。

Keyboard

DI

PA

キーボードは出力レベルが大きい場合があるので、後述するPADが重要になります。

またステレオで送りたい場合は、

L → DI 1台

R → DI 1台

と、基本的には2ch必要です。

そのためキーボード用途なら最初からステレオDIを使う方法もあります。


PAD(アッテネーター)って何?

DI-1には、

-20dBu / 0dBu / +20dBu

という3段階の入力切り替えがあります。

ここは非常に重要です。

簡単に言えば、

「入ってくる信号の大きさにDIを合わせる」

ためのスイッチです。

普通のギターやパッシブベースのような比較的小さな信号なら、低い入力レベル側。

キーボードやライン機器など信号が大きければ0dBu。

さらに非常に大きな信号では+20dBu側を使う、と考えると理解しやすいです。


なぜPADが必要なの?

例えばキーボードから非常に大きな信号が来ているのに、DI側が小さな楽器信号を受ける設定になっていると、

DI内部で信号がクリップする

可能性があります。

ここで重要なのは、

「ミキサーのGAINを下げればいいじゃん」

では解決しない場合があること。

DIの中ですでに歪んでしまった信号は、その後ミキサーのGAINを下げても元には戻りません。

だから、

DIに入る前の段階で適切なレベルにする

必要があります。

現場で

「なんかDIの音が歪んでるな」

と思ったら、PA卓のGAINだけでなくDIのPAD設定を確認するのは基本です。


GROUND LIFTとは?

これもPA現場では超重要。

機材を接続した瞬間、

「ブーーーーーーン」

という低いハムノイズが発生することがあります。

原因の一つが、

グランドループ

です。

複数の機器が異なる経路で接地されることで電位差が生じ、オーディオラインにノイズが乗る場合があります。

DI-1には、

GROUND LIFT

があります。

このスイッチで入力側とバランス出力側のアース接続を絶縁できます。

つまり、

普段 → GND接続

ノイズが出たら、

GROUND LIFTを試す

という使い方です。

「音が悪いからとりあえずGROUND LIFT」ではなく、

ハムやグランドループ対策として使う

ものだと理解しておきましょう。


PHASEスイッチは何?

DI-1にはPHASE(位相・極性反転)スイッチがあります。

これは

BALANCED OUTの極性を反転させる機能

です。

単独でDIだけを使っている場合、切り替えても「何が変わった?」となることがあります。

威力を発揮するのは、レコーディングの時。

同じ音源を複数の方法で収音している場合。

例えばベース。

DIで直接ベースを取る。

同時にベースアンプの前にマイクを立てる。

すると、

DIの信号

アンプ→空気→マイクの信号

には時間差や極性関係が発生します。

この2つを混ぜたときに低音が薄くなるなどの位相問題が起こることがあります。

そこでPHASEを反転させ、

どちらの状態の方が自然に太く聞こえるか

確認するわけです。

DIとマイクを同時使用するときなどに極性反転が有効になるわけです。


ファンタム電源とは?

ここも初心者にはかなり謎の言葉です。

Phantom Power(ファンタム電源)

とは、

XLRマイクケーブルを通して、ミキサー側から接続機器へ電気を送る仕組み

です。

一般的には48Vが広く使われています。

コンデンサーマイクを使うときによく登場する「+48V」がこれです。

そしてBOSS DI-1もファンタム電源に対応しています。

対応範囲は24〜48V DC。

つまり、

DI-1
↓ XLR
ミキサー

と接続し、

ミキサー側でファンタムをONにすれば、

そのXLRケーブルからDI-1へ電気が送られる。

だからDI側に別途ACアダプターをつなぐ必要がありません。

これはライブ現場ではめちゃくちゃ便利です。


じゃあ9V電池は何のため?

ファンタム電源が使えない環境でもDI-1を動かせるようにするためです。

DI-1は

9V電池

または

ファンタム電源

で駆動できます。

ライブハウスなら通常はPA卓からファンタムを送れるので、個人的にはファンタム運用の方が管理しやすいと思います。

電池はいつか切れます。

そしてライブ中に、

「DIの電池が弱ってました」

というトラブルは避けたい。

PA側で管理できるならファンタムは非常に便利です。

ファンタム48Vって危なくないの?

「48V」と聞くと、

そんな電圧を音声ケーブルに流して大丈夫なの?

と思いますよね。

そもそもファンタム電源はコンデンサーマイクなどを動作させるために設計された仕組みで、対応機器なら通常問題ありません。

DI-1も正式にファンタム対応機器です。

ただし重要なのは、

何でも適当に48VをONにしていい、という意味ではない

こと。

接続機器がファンタム対応か確認するのが基本です。

ポイント

またファンタムをON/OFFしたりXLRを抜き差しするときは、PAのチャンネルをMUTEする、フェーダーを下げるなどして、大きなポップノイズがスピーカーへ送られないようにするのが安全です。


DI-1はスピーカー出力まで入れられる

実はDI-1の面白いところがここです。

BOSSは公式に、

ギターアンプなどのスピーカーアウトにも接続可能

としています。

最大入力レベルは+45dBu、390Vp-pという非常に大きな入力に対応しています。

このような高レベル信号では適切なPAD設定が必要です。

ただし、これは初心者が「アンプのスピーカー端子に適当にDIを挿していい」という意味ではありません。

真空管アンプなどは適切なスピーカー負荷が必要な機種もあるため、アンプ側の仕様・接続方法を理解した上で使用する必要があります。


アクティブDIとパッシブDIは何が違う?

DIは大きく、

アクティブDI

パッシブDI

に分けられます。

DI-1はアクティブDI。

電子回路・バッファを使うので電源が必要です。

一方パッシブDIは基本的にトランスを使って信号変換するので、電源を必要としません。

例えばRadial ProDIは典型的なパッシブDIで、電源不要で動作します。

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どちらが絶対に上という話ではありません。

ざっくり考えるなら、

パッシブギター・ベース・ピエゾなど
→ 高入力インピーダンスのアクティブDIが有利になりやすい

一方、

アクティブベース・キーボード・DJ機器など出力が強い機器
→ 良質なパッシブDIも非常に使いやすい

という考え方があります。

最終的には機器同士のインピーダンス、出力レベル、ヘッドルーム、欲しい音色によって決まります。


BOSS DI-1以外なら何を選ぶ?

DI-1は「現場に何台置いても困らない万能型」ですが、目的によって別のDIを選ぶ意味もあります。

とにかく安く万能に使いたい

BEHRINGER DI100

かなり安価なアクティブDIですが、ファンタム/9V電池に対応し、LINK OUT、PAD、GROUND LIFTまで装備しています。

予備DIを大量に用意したいライブハウスなどでは面白い選択肢です。


電源不要でシンプルに使いたい

Radial ProDI / JDI系

パッシブDIです。

電池もファンタムも必要ありません。

特にキーボードやアクティブベースなど、ある程度しっかりした出力を持つ機器との組み合わせでは非常に使いやすいタイプです。

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「現場のPAの間でも音質がめちゃくちゃいい!」という声をよく聞く定番のDI。


パッシブ楽器を高音質で録りたい

COUNTRYMAN Type 85

世界中のライブ・スタジオで定番になっているアクティブDIです。

入力抵抗は10MΩと非常に高く、ピエゾピックアップなどの高インピーダンス音源にも対応。48Vファンタムまたは9V電池で動作します。

アコギなどをできるだけ自然に取り込みたい場合にも候補になります。

現代的なアクティブDIならRadial J48

Radial J48

48Vファンタムで動作するプロ向けアクティブDI。

PAD、GROUND LIFT、極性反転、HPFなどを備えています。

特に高出力のアクティブベースやデジタルピアノなどでも十分なヘッドルームを確保することを重視した設計です。

ライブからレコーディングまで「ワンランク上の万能アクティブDI」を探すなら有力候補です。


音質までこだわるならRupert Neve RNDI

さらにレコーディング寄りに考えるなら、

Rupert Neve Designs RNDI

という選択肢もあります。

Rupert Neve設計のカスタム出力トランスとClass-AディスクリートFET入力段を組み合わせたアクティブDIで、メーカー自身もベース、ギター、アコースティック楽器、ライン音源など幅広い用途を想定しています。

単純な「信号変換箱」というより、

DIそのものの音質まで含めて選びたい人向け

と言えるでしょう。

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目的別にまとめると

ライブハウスの常設・万能性
→ BOSS DI-1

安く揃えたい
→ BEHRINGER DI100

電源不要・キーボードやアクティブベース
→ Radial ProDI / JDI系

パッシブベース・アコギ・ピエゾ
→ Countryman Type 85

高性能な現代型アクティブDI
→ Radial J48

レコーディングで音質まで追求
→ Rupert Neve Designs RNDI

という選び方が分かりやすいと思います。


DIを理解するとPAの信号経路が一気に見える

DIは見た目だけなら、

「フォンをXLRに変換する箱」

に見えます。

でも実際にはもっと重要です。

DIがやっているのは、

インピーダンスを合わせる。

アンバランス信号をバランス化する。

長距離伝送に強い信号へ変える。

PAと楽器アンプへ信号を分岐する。

グランドループによるノイズを回避する。

入力レベルを適正化する。

という仕事です。

だからライブPAでは、マイクと同じくらい重要な入口の一つです。

最後にBOSS DI-1の基本形だけ覚えておきましょう。

楽器

INPUT

DI-1
├ PARA OUT → 楽器アンプ
└ BALANCED OUT → XLR → PAミキサー

そして、

信号が大きい → PADを確認

ブーンというノイズ → GROUND LIFTを確認

DI+マイクを混ぜて音が痩せる → PHASEを確認

電源 → 9V電池またはファンタム

ここまで理解できれば、DI-1は単なる謎の箱ではなくなります。

むしろ、

「楽器とPAをつなぐ、小さいけれど極めて重要な変換所」

というDIの役割が見えてくるはずです。

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このブログの制作者 el music entertainment代表 について

18歳で大阪のライブハウスにて音響を学び、PA業務・バンド活動・音源制作に没頭。
27歳から東京に拠点を移し、32歳で独立。自己資金でライブハウス「Untitled」を開業。
PAから音響施工、レコーディング、アーティストプロデュースまでを自ら手がけ、開業から13年以上にわたり多くの音響技術者を育成。

コロナ禍では新たな挑戦としてYouTube事業をスタートし、秋葉原・上中里に専用スタジオを開設。
登録者300万人を超える人気YouTuber/インフルエンサーとのプロジェクトも成功させ、制作動画の中には160万回再生を突破した作品も。

防音工事・ルームチューニングについては、長年タッグを組む施工業者とともに試行錯誤を重ね、独自のノウハウと技術を蓄積。
音と映像の両面で、本質を追求する総合プロデューサーとして活動中。