機材関係

エンジニアが オーディオテクニカ AT2020 CWH を実際に使ってみた感想

正直に言うと、最初に Audio-Technica AT2020 CWH を手に取ったときの感想は

「AT2020か……まあ定番」

くらいのテンションだった。

宅録、配信、仮歌録り、YouTube。


どの現場に行っても、なぜか必ず1本は転がっている。


良くも悪くも“見慣れすぎたマイク”という印象で、正直ワクワク感はあまりなかった。

ただ、仕事柄どうしても気になった。


高級マイクや業務用マイクを日常的に使っているエンジニアの耳で聴いたとき、AT2020は本当に使えるのか?


「初心者向け」

というラベルを一度外して、フラットな目線で向き合ってみた。

実際にボーカル、ナレーション、配信、仮歌、ミックスまで一通り試した結果、見えてきた結論はシンプルだ。

用途をきちんと割り切れば、かなり優秀。
ただし、万能マイクではない。

このレビューでは、スペックや評判ではなく、
現場でどう感じたか/どう使えるか/どこが限界かを、エンジニア目線で正直に書いていく。

この記事のポイント

  • エンジニアが実際の録音・配信現場でAT2020 CWHを使ったリアルな音の印象
  • 「なぜ現場にAT2020が異常に多いのか?」その理由
  • 高級マイクと比較して見えた、AT2020の強みと弱み
  • ボーカル/配信/仮歌/ナレーションでの向き・不向き
  • ミックス時に感じた「扱いやすさ」と「触ってはいけないポイント」
  • 初心者におすすめできる理由、逆におすすめしないケース
  • プロ目線で見たAT2020 CWHの“正しい立ち位置”

AT2020 CWHを選んだ理由(なぜ今さら使ったのか)

今回あらためて Audio-Technica AT2020 CWH を使うことになった理由は、実はかなり現場的だ。

まず一つ目は、白(CWH)が必要な案件だったこと。


映像込みの配信やYouTube収録では、マイクの色や見た目が意外と重要になる。


黒いマイクだと背景に沈んでしまったり、画面全体が重たく見えることも多いが、白いマイクは照明を当てたときの抜けが良く、スタジオ映えする。

音とは直接関係ないように見えて、「映像がある現場」では、こうした要素が機材選定の決め手になることも珍しくない。


AT2020 CWHは、その点でちょうどよかった。

二つ目の理由は、クライアントがすでに持っていたという点。


宅録案件やオンライン収録では、こちらがマイクを指定できないケースも多い。
「手元にあるのがAT2020なんですが…」
そう言われることは本当に多く、むしろ珍しくない。

エンジニアとしては、
“相手の環境でどこまでクオリティを引き上げられるか”が腕の見せどころになる。
AT2020は、その試金石としてちょうどいい存在だった。

そして三つ目が、個人的に一番大きな理由。


「初心者が最初に買うマイク」の代表格であるAT2020を、エンジニア目線でちゃんと再評価したかった。

正直、これまで何本も高級マイクや業務用マイクを使ってきた中で、AT2020は「定番すぎて、あえて深く語られないマイク」になっていた。

でも、現場でこれだけ使われ続けているということは、それなりの理由があるはずだし、逆に「ここが限界」というポイントも、ちゃんと見えるはず。

実際に使ってみると


「なるほど、だから初心者に勧められるんだな」という点もあれば、「ここは誤解されやすいな」と感じる部分もはっきりあった。

このレビューでは、エンジニアとして、現場でどう向き合うマイクなのかを整理するために、あえて今さらAT2020 CWHを使っている。

開封・第一印象(エンジニア視点)

箱を開けて最初に感じたのは、とにかく軽いということ。


良い意味でも悪い意味でも余計な主張がなく、シンプルそのもの。


スイッチ類も一切なく、「余計なことはさせない」という割り切りがはっきりしている。

見た目に関しては、正直、価格以上


特にCWH(ホワイト)は、照明を当てたときの映え方がかなりいい。


配信や映像込みの収録では、マイクが画面に入るだけで印象が変わるが、この白は「安っぽさ」を感じさせにくい。

一方で、付属のホルダーは正直チープ。


強度的に不安があるわけではないが、「プロの現場で常用したい質感か?」と聞かれると、答えはNO。


ここは完全に妥協ポイントで、必要なら早めに交換したくなる。

ただし、本体そのものの耐久性は高い。

実際、AT2020は雑に扱われがちな現場で使われ続けているが、致命的に壊れた、という話をほとんど聞かない。

高級マイクのように「丁寧に扱わないと怖い」感じがなく、ラフな現場でも安心して立てられるのは、想像以上に大きなメリットだ。

音の第一印象(素の音を聴いた正直な感想)

音を出して最初に感じるのは、ハイが少しだけ持ち上がっていて、「それっぽく」聞こえるという点。

いかにもコンデンサーマイクらしい明るさがあり、初めて使う人でも「お、ちゃんと録れてる」と感じやすい音だ。

一方で、ローはかなりタイト。


量感は出ないし、太さを期待すると物足りなさを感じる。


近接しても、低音がモリっと出るタイプではない。

中域は比較的フラットで、声の芯が前に出やすい印象。


そのおかげで、ナレーションや配信では輪郭が分かりやすい。

全体を通して感じるのは、
良くも悪くも“色が薄い”マイクだということ。

キャラクターで音を作るマイクではなく、
素材をそのまま差し出してくるタイプ。


だからこそ、音が地味に感じる人もいるだろうし、
逆にエンジニアからすると扱いやすい。

👉 エンジニア的にまとめると


「EQ・コンプ前提ならかなり扱いやすい素材」

最初から完成形の音を求めると肩透かしを食らうが、ミックスで整える前提なら、変なクセがない分、仕事はしやすい。

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AT2020 CWHを実際に
録ってみた用途別レビュー(体験談メイン)

実際の機材レビューで一番大事なのは


「スペック上どうか」

よりも

「現場でどう使えたか」

だと思っている。


AT2020 CWHも同じで、音を少し聴っただけでは本当の評価は見えてこない。


ボーカル、ナレーション、配信、仮歌録り――

用途が変われば、求められる役割も、見えてくる弱点もまったく違う。


「これは使える」と感じた場面と、「ここは割り切るべきだ」と思ったポイントを体験談ベースで整理していく。

ボーカル(仮歌・デモ)

まず一番試したのがボーカル。
実際の制作現場でも、AT2020が使われるのは仮歌やデモ録りが圧倒的に多い。

男性ボーカルの場合、第一印象は抜けは良いが、太さは出ない


中高域が前に出る分、言葉の輪郭は分かりやすいが、声の下支えになる低域の厚みはどうしても物足りない。


本チャンの歌録りで「これ1本で完結させる」のは正直厳しい。

AT2020 図

一方で、女性ボーカルとの相性はかなり良い。
もともと声に芯と明るさがある場合、AT2020のキャラクターと噛み合って、余計な処理をしなくてもスッと前に出てくる。

仮歌やガイド用途として見ると、評価は一気に変わる。


音程・リズム・ニュアンスを確認するための素材としては十分以上


無理に色付けしない分、後工程で扱いやすい。

👉 本チャンには使わないが
👉 作家・デモ制作では全然アリ
というのが、エンジニアとしての正直な判断だ。

AT2020指向性

ナレーション・配信

ナレーションや配信用途では、AT2020の良さがかなりはっきり出る。

まず、ノイズが少なく、声が明瞭


変に低域が膨らまないので、声がモコモコせず、言葉が聞き取りやすい。

近接効果も控えめで、マイクに近づきすぎても低音が暴れにくい。


これは配信初心者にとって、かなり大きなメリットだ。

しゃべりながら距離がブレても音が破綻しにくく、「なんか音が変になった」という事故が起きにくい。
エンジニアがいない環境で使われ続けている理由が、ここで腑に落ちた。

👉 YouTube / Podcast / 配信用でかなり優秀

この用途に限って言えば、価格以上の安定感

楽器録音(アコギ・アンプ)

楽器録音では、評価はややシビアになる。

アコースティックギターは、弦のアタック感がキラっと出て、音の輪郭は分かりやすい。


ただし、箱鳴りや深みは出にくい


コードストローク中心なら成立するが、繊細な表現を求めると物足りなさを感じる。

ギターアンプ録りは、距離をしっかり取れば使える。


ただし、マイキングの自由度は高くない。


アンプの空気感や立体感を録りたい場合は、限界が見える。

総じて、生楽器の“空気感”を録るマイクではない**。

👉 楽器メインなら、
👉 最初から別マイクを勧める
というのが、エンジニアとしての結論になる。

AT2020 CWHをミックスしてみて分かったこと

AT2020 CWHの評価が一段はっきりしたのは、
実際にミックス工程に入ってからだった。

まず感じたのが、EQでローを足すとすぐ破綻するという点。


音が細いからといって、80Hz〜150Hzあたりを無理に持ち上げると、急にモコついたり、輪郭がぼやけてくる。

ローが「足りない」のではなく、もともと入っていない帯域を無理やり作ろうとすると破綻する
そんな感覚に近い。

次に注意が必要なのが、3〜5kHz帯域


この辺りは、声の抜けや明瞭さを司る美味しい帯域でもあるが、AT2020の場合、触りすぎるとすぐに耳につく。


少し上げただけで、サ行やアタックがキツくなりやすい印象だ。

コンプレッサーも同様で、ガッツリかけるより軽めが正解


アタックを潰しすぎると、せっかくの自然な輪郭が一気に平坦になる。


2〜3dB程度のコントロールで十分なケースが多い。

いろいろ試した結果、一番音が良かったのは、
「何もしないに近い状態」だった。

EQで大きく作り込むより、不要な帯域を軽く整理する程度。


コンプも整えるだけ。


下手に“プロっぽい処理”を足さない方が、結果がいい。

👉 エンジニア目線でまとめると


「下手に弄らなくていい素材」という意味では、かなり優秀。

完成形を押し付けてこない分、扱う側の判断を邪魔しない。


AT2020が長く使われている理由は、この“扱われ方の楽さ”にあると感じた。

他にある高級マイクと比べてどうか?

ここまでAT2020 CWHを単体で見てきたが、
エンジニアとしてどうしても避けて通れないのが、「じゃあ他の高級マイクと比べてどうなのか?」という視点だ。

Neumann や Telefunken など、いわゆる業務用・高級マイクを日常的に使っていると、音の情報量、立体感、空気の乗り方には明確な差を感じる。

ただ、その差を「良い・悪い」で切り捨ててしまうと、AT2020の立ち位置は正しく見えてこない。
ここでは価格差を前提にした上で、音の方向性・役割・使われ方の違いという観点から、高級マイクとAT2020 CWHを冷静に比べていく。

AT2020 CWHを使っていて「録れていない」と感じる瞬間がほとんどない

情報は少ないが、必要な要素はちゃんと押さえている。


音が足りないというより、「余白が少ない」という表現のほうが近い。

ここが、価格差=そのまま音質差ではないと感じる理由でもある。


高級マイクは“音楽的な余白”まで含めて録ってくれるが、AT2020はそこを潔く切り落としている。

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👉 エンジニア的に整理すると、

  • 10万円クラスのマイク
     声や楽器以外に、空気や距離感まで録れる
  • AT2020
     必要な音だけを、過不足なく録れる

どちらが優れているかではなく、
何を求めるかの違いだと感じた。

AT2020 CWHが向いている人

ここまでの実体験を踏まえると、
AT2020 CWHがハマる人はかなり明確だ。

  • 宅録初心者
  • 配信・YouTube・ナレーション用途
  • 仮歌・デモ制作がメイン
  • 白いマイクが必要な人(映像・配信では意外と重要)

特に、「変なクセがない」「事故りにくい」「処理しやすい」


この3点は、初心者〜中級者にとって大きな武器になる。

AT2020 ライフスタイル

向いていない人(正直レビュー)

一方で、明確に向いていないケースもある。

  • プロボーカルの本番REC
  • 最初から太さ・色気・艶を求める人
  • EQやミックスが苦手な人(音作り前提のマイクなので)

録った瞬間に完成形の音を求める人には、
AT2020は少し素っ気なく感じるはずだ。

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エンジニアとしての総評(まとめ)

AT2020 CWHを一通り使ってみて、エンジニアとして一番しっくりきた評価はこうだ。

「情報量は多くないが、必要な音はきちんと捉えているマイク」

高級マイクと比べると、空気感や立体感、余韻まで含めた表現力は確かに及ばない。


ただし


「何かが欠けている」「ちゃんと収音できていない」


と感じることはほとんどなかった。

むしろ、
余計な成分が少ない分、ミックスや用途を間違えなければ、破綻しにくく、扱いやすい素材を出してくれる。

AT2020 CWHは、音で主張するマイクではなく、使う側の判断を邪魔しないマイクだと思う。

だからこそ、

  • 仮歌
  • 配信
  • ナレーション
  • 宅録環境

こうした場面で、
長年「定番」として生き残ってきたのだろう。

エンジニア目線で見ても、「安いから仕方ない」と切り捨てるには、あまりにも完成度が高い。

まとめ

  • AT2020 CWHは、用途を割り切れば今でも十分通用するマイク
  • 情報量や立体感は高級マイクに及ばない
  • その代わり、必要な音を素直に、過不足なく捉える
  • EQやコンプをかけすぎない方が結果が良い
  • 仮歌・配信・ナレーション用途では特に安定感が高い
  • 本チャンRECや色気重視の用途には向かない

万能ではない。
でも、役割がはっきりしている分、信頼できる。

それが、エンジニアとしてAT2020 CWHに抱いた正直な評価だ。