「マイク選びに迷ったとき、何を基準に選びますか?」
ライブハウス運営、レコーディングスタジオ経営を13年以上続けてきた私たちが、数々のマイクを試してきた中でも、MXL V69 Mogami Editionは特別な存在です。
実際にアイドルグループのボーカルレコーディングでも活躍したこのマイク。
今回は、プロ現場での使用感をベースに、音質、特徴、使いこなしのコツまで、リアルな視点で徹底レビューします。
目次
- 1 MXL V69 Mogami Editionとは?|コスパを超えた真空管マイク
- 1.1 アメリカのマイクブランドMXL名門ケーブルメーカーMogamiとタッグを組んで開発
- 1.2 実際に購入にいたったきっかけ
- 1.3 実際の現場レビュー|アイドルレコーディングでの使用例
- 1.4 マイナスポイント|専用ケーブルとアダプターに注意
- 1.5 MXL V69 Mogami Edition向いている人・向いていない人
- 1.6 このマイクがあまり向いていない人
- 1.7 録り音レビューMXL V69 Mogami Editionの音はこう聞こえる
- 1.8 使う上での注意点|メンテナンスと環境作り
- 1.9 湿度管理|マイクの寿命を守る基本
- 1.10 ゲイン設定のコツ|出力が高めの特性に合わせる
- 1.11 MXL V69 Mogami Editionは"プロ現場の武器"になる
- 1.12 関連
MXL V69 Mogami Editionとは?|コスパを超えた真空管マイク
記事のポイント
MXL V69 Mogami Editionとは?
実際のレコーディング現場での使用例
音質の特徴(ボーカル向きの美しい中高域)
このマイクが向いているジャンル・用途
使う上で注意すべきポイント
価格以上のパフォーマンスとプロ現場での信頼感
アメリカのマイクブランドMXL
名門ケーブルメーカーMogamiとタッグを組んで開発
ハイエンドコンデンサーマイク、それが「MXL V69 Mogami Edition」です。
本機最大の特徴は、内蔵された12AT7真空管による、豊かな温かみと音の厚み。
さらに、信号伝送の要となるケーブルにMogami社製ハンドメイドケーブルを採用することで、ノイズを極限まで抑えたクリアなサウンドを実現しています。
特にボーカル収録に特化して設計されており、世界中のレコーディングスタジオや、プロの現場で愛用されている定番機種でもあります。
実際に購入にいたったきっかけ
プロ現場でも"一発録り"で仕上がることが多く、初めて使った時から"これは違う"と感じた一台です。選んだきっかけは、MXLのワンランク下のコンデンサーマイクV67Gが値段以上に高音質だったところ。上位モデルの音がきになり、スタジオチームで話し合い、購入にいたりました。
良い意味で予想通りの音でしたが高価なハイエンドマイクにしか出せない"艶感"が、この価格帯で手に入る驚きは今でも鮮明に覚えています。
実際の現場レビュー|アイドルレコーディングでの使用例
私が実際に運営するレコーディングスタジオで、某アイドルグループのボーカル収録にMXL V69 Mogami Editionを使用しました。
印象的だったのは、次のポイントです。
- 声の輪郭が自然で、立体的に前に出る
- 低価格帯マイクにありがちな「こもり」「耳に刺さる高域」が一切ない
- 特に高域(ハイミッド帯域)の抜けが素晴らしく、サビで声が自然に前に押し出される
また、女性ボーカル特有の柔らかさや艶、煌びやかな響きが、真空管独特の倍音で一層リッチに膨らむのが特徴です。
特に印象的なのが、低音がしっかりと倍音が乗りながらでるにも関わらず抜けがいいボーカルが録音できるところです。
【レコーディングスタッフのコメント】
女性ボーカルの柔らかさと煌めきを、そのまま真空管特有の温かみで包み込んでくれる印象。特にアイドルソングのような明るくクリアなトーンには、驚くほど相性が良かった。というのが大半の感想です。
やはり特筆すべきは、低域の太さ。
いわゆるドスンと沈み込む低音ではなく、煌びやかにまとまり、全体を下支えするような豊かな低域が得られます。
これにより、ミックス時に無理なEQ補正をする必要が少なく、自然な音作りが可能になりました。
マイナスポイント|専用ケーブルとアダプターに注意
もちろん、完璧なマイクは存在しません。
MXL V69 Mogami Editionにも、使用時に気をつけるべきポイントがあります。
それが、専用ケーブルと電源アダプター(専用パワーサプライ)が必須という点です。

- マイク本体と専用パワーサプライを接続するための独自規格ケーブルが必要
- 一般的なXLRケーブルでは代用できない
- ケーブルや電源を忘れたり、紛失・故障した場合、すぐに代替が効かない
- 出先や急なセッションでは注意が必要
スタッフの失敗談を一つ
一度、他のスタジオで持ち込み機材で録音をする時に、現場にパワーサプライを持っていくのを忘れて、急遽別マイクに切り替えた経験もあります。それ以来、必ず専用ケースに"まとめて収納"するようにしました。

ここまでを一言でまとめると
✅ 圧倒的ボーカル収録力(女性ボーカル向け)
✅ 真空管ならではの艶・厚み・立体感
✅ 低域も煌びやかで自然なまとまり
✅ ただし、専用ケーブルと電源管理は必須
MXL V69 Mogami Edition
向いている人・向いていない人
このマイクが向いている人
✅ 女性ボーカルをメインに録る人
✅ アイドル・ポップス・アニソン系など、煌びやかな高域が求められる楽曲に携わる人
✅ 真空管マイク特有の"温かみ"と"艶感"を積極的に活かしたいエンジニア
✅ スタジオ常設用に、安定して使える高音質マイクを探している人
私個人の感想を書くと・・・
初めての真空管マイクとしてもおすすめです。10万円以下クラスでは破格のクオリティなので、コストを抑えつつ本物志向の音作りをしたい人には最高の選択肢になるはず!荒々しいロックボーカルやデスボイスなど、音圧命のジャンルには別の選択肢をおすすめします。繊細さと温かみを活かすマイクなので、求めるサウンドキャラクターが合うかどうかが大事!!
このマイクがあまり向いていない人
❌ ライブ現場や移動が多い収録の人
❌ ロック・メタルなど強い音圧
❌張り上げ系ボーカルを中心に録る人
❌ 高い耐久性(衝撃耐性)を求める人
❌ 専用ケーブル管理が面倒な人
録り音レビュー
MXL V69 Mogami Editionの音はこう聞こえる
実際に、女性ボーカル(アイドル系)をレコーディングしたときの感触を、言葉でできる限り正確に表現してみます。
◉ アタック(声の立ち上がり)
- しなやかでスムーズ。
- 硬すぎず柔らかすぎない。
- 耳馴染みが良い立ち上がり。
- 1kHz〜3kHzあたりの「抜ける帯域」が自然に浮き上がる印象。
◉ ボディ(中低域の厚み)
- 真空管特有のふくよかさを持つ。
- ダブつきやモタつきがないので、リズムに自然にフィットする。
- 胸に響くような心地よい低音感
- 特にAメロ・Bメロで「説得力のある声」になる。
◉ ハイエンド(高域の抜け・煌めき)
- シルキーでナチュラルな伸び。
- 7kHz〜12kHz付近にかけて、耳障りな鋭さがなく、自然にスッと上昇していく感触。
- サビで高音が伸びたときに、まるで空に抜けていくような開放感がある。
【独断で語る録り音のイメージまとめ】
🌸「艶やかで輪郭がしっかりしながら、耳あたりが優しく、空間に溶け込むようなボーカル」
🌸「シビアな補正をしなくても、ミックスの中で自然に"主役"になれる声になる」
これが、MXL V69 Mogami Editionならではの強みです。
ワンランク下の廉価版であるこちらも高音質でおすすめ!
MXL V67G|クラシックなルックスに秘めた、本物のサウンドクオリティ
MXL V67Gは、ビンテージスタイルの美しいゴールドグリルとグリーンボディが印象的なコンデンサーマイク。
しかし、このマイクの真価は見た目だけにとどまりません。
クリアで温かみのあるサウンド特性は、特にボーカル録音で本領を発揮。
低域はふくよかに、中高域はきらびやかに、まるでアナログレコーディング時代の名機を思わせるトーンを再現。
コストパフォーマンスにも優れており、手に取りやすい価格帯ながら、プロフェッショナルユースにも十分耐えうるクオリティ。
内部回路にはカスタムチューニングが施されており、ボーカルだけでなく、アコースティックギターや弦楽器の繊細なニュアンスも忠実にキャプチャー可能。
温かみと抜けの良さを兼ね備えたサウンドが欲しいなら、V67Gは非常に魅力的な選択肢で、当スタジオでもボーカルに合わせてレコーディングの際に活躍していた1本。

使う上での注意点|メンテナンスと環境作り
真空管マイクは「育てる」機材
ウォームアップの重要性
MXL V69 Mogami Editionは、内蔵に12AT7真空管を搭載しています。
真空管は電源を入れてすぐに性能を発揮するものではありません。
使用前には必ず5分〜10分程度のウォームアップが必要です。
ウォームアップを怠ると、
- 音の輪郭が不安定になる
- ノイズが乗りやすくなる
- 真空管の寿命を縮める
といった問題が発生しやすくなります。レコーディング現場では、スタジオに入ったらまず"電源ON"。ウォームアップ中に歌チェックや準備を進めるのがおすすめです。
湿度管理|マイクの寿命を守る基本
真空管マイクは湿気に非常に弱いため、使用後の保管にも注意が必要です。
推奨する保管環境:
- 防湿ケース(湿度40〜50%程度)での保存
- 使用後はしっかり乾燥させてから収納
- 直射日光や高温多湿を避けた場所に置く
特に日本の梅雨時期や夏場は、マイク本体内に結露が発生するリスクが高まります。
長期間湿気にさらされると、真空管の内部劣化や接点不良を引き起こす可能性があるため要注意です。
機材を長持ちさせるコツを公開
私は除湿剤を入れたハードケースにV69専用で収納しています。数千円でできる対策ですが、マイクの寿命を大幅に延ばせます。
ゲイン設定のコツ|出力が高めの特性に合わせる
MXL V69は、一般的なコンデンサーマイクより出力レベルが高めです。使っていた時の印象はゲインを通常のコンデンサーより気持ち少なめにとると、いい感じになっていました。
そのため、オーディオインターフェースやプリアンプ側で次の点に注意しましょう。
- ゲインノブを通常より控えめに設定する
- セッティング直後はピークメーターをしっかり確認
- 大きな声の歌い手の場合、インターフェース側でパッド(-10dB減衰)機能をオンにするのも有効
MXL V69 Mogami Editionは"プロ現場の武器"になる
今回レビューしてきたMXL V69 Mogami Editionは、
単なる「コスパがいいマイク」という枠を超えた、プロフェッショナル仕様の真空管マイクでした。
ポイントを改めて整理
✅ 【音質】
➡︎ 真空管ならではの温かみ、艶、立体感。特に中高域の伸びが美しい。
✅ 【使いやすさ】
➡︎ 専用ケーブルとパワーサプライが必要だが、スタジオ常設なら問題なし。
✅ 【運用面】
➡︎ ウォームアップ必須。湿度管理と定期メンテナンスをしっかり行うことで、長く高品質を保てる。
✅ 【向いている用途】
➡︎ 女性ボーカル、ポップス、バラード、繊細なアコースティック録音。
✅ 【懸念点】
➡︎ 携帯性はやや低い。荒々しいジャンルにはやや繊細すぎる場面も。
私の独断と偏見でまとめると・・・
ライブハウスとスタジオ経営、音響エンジニア歴13年
いろんな音を聞いてきましたが、音楽の機材は、音質も大切ですが、そのコストに見合っているかを考えて、うまく付き合っていくことが大切です。
そういう意味でもMXL V69 Mogami Editionは"持っていて損しないマイク"です。
価格帯を超えた音の説得力。ボーカルレコーディングにこだわりたいなら、一度は必ず手にして試してほしい機材だと胸を張って言えます。
- モニタースピーカーで音楽を聴く!エンジニアが選ぶ最高の5選を紹介!
- 初心者におすすめのコンデンサーマイク5選|音響プロが現場目線で解説
- 歌い手になるには?未経験から始めるための5ステップと必要な機材
- プロ使用!ハイエンド・ギターシールドの世界へようこそ。
- 「初心者向け|ベース用エフェクターの選び方とおすすめモデル」
El Music Entertainment 創業者/音響・映像プロデューサー
18歳で大阪のライブハウスにて音響を学び、PA業務・バンド活動・音源制作に没頭。
27歳から東京に拠点を移し、32歳で独立。自己資金でライブハウス「Untitled」を開業。
PAから音響施工、レコーディング、アーティストプロデュースまでを自ら手がけ、開業から13年以上にわたり多くの音響技術者を育成。
コロナ禍では新たな挑戦としてYouTube事業をスタートし、秋葉原・上中里に専用スタジオを開設。
登録者300万人を超える人気YouTuber/インフルエンサーとのプロジェクトも成功させ、制作動画の中には160万回再生を突破した作品も。
防音工事・ルームチューニングについては、長年タッグを組む施工業者とともに試行錯誤を重ね、独自のノウハウと技術を蓄積。
音と映像の両面で、本質を追求する総合プロデューサーとして活動中。