防音工事・リノベーション

ライブハウスの防音は不可能。100%無理ゲーです。

ライブハウス経営で一番のポイントが防音。

8年前に、単身で上野Untitledというライブハウスの経営をスタートしたときに一番のネックになったのが「防音」という問題でした。

これから、独立して何か音楽に関するビジネスを展開したい。自分のお店を持ちたい。などと考えている人が偶然このブログにたどり着いたのかもしれませんが、少なくとも音に関するビジネスを考えているなら、防音というテーマに関する理解を深く持つことは必須です。

このブログでは、防音に関する技術や施工法も含め、細かく紹介していきたいと考えていますが、一番最初に防音に関する基礎知識をライブハウスを運営していく上で身につけたものを中心にご紹介させていただきたいと思います。

防音とは何か?

基本的なことですが、まずこの防音とは何か?ということを理解することが大切です。

よく防音の業者さんで、騒音の測定計をもって、「〇〇デシベルですねー」ほら、小さくなりました!みたいな動画や解説をしている方が多数いますが、これは単純に客寄せパンダの視覚的な演出なだけで当てにならない情報ですので信用しないでください。

上記のデータで判断する

という時点で、そもそものテーマである「防音とは何か」

ということを、そもそも理解していません。

まず大前提として、防音というのは誰に対して行うのか?何に対して行うのか?

ということを理解することが大切です。

騒音計測系は信じるな。

よくサイトで、マイナス〇〇デシベルの防音性能を体現!のようなキャッチフレーズがあります。これっておかしいと思いませんか?この人に聞きたいのですが、

あなたは誰に対して防音をしているのですか?

ということをお伺いしたいんです。

僕が理解している限り、人間の耳が感じ脳へ伝える騒音の量を100%正確に数値化したり、視覚化できているソフトや機材はないと思っています。

例えば、 CDなどのレコーディングして、マスタリングしてミックスダウンする際に、音量感を統一する際に、ラウドネスメーターのようなプラグインを使うことがあります。

そのラウドネスを図る何万円もするプラグインでさえ、あてになりません。数値上は高いですが、実際聞いてみたらそんなに音量感がなかったり、少なかったからといって、必ずしもうるさくないわけでもありません。

ここで、最初に戻りますが、大事なのは

よくある業者が使う騒音計がこれです。

こんなものでは何にもわかりません。

ここで大事なのは

誰のための、誰に対しての防音なのか?

ということなのです。

ライブハウスが行う防音と一般家庭が行う防音と、学習塾やパチンコ屋さんが行う防音 など。

さまざまなシーンがありますが、これらを騒音系の数値でまとめて考えて、判断するのは間違っています。なので、この時点で、騒音系を出して静かになったとアピールしている業者さんがいたら、ボッタクリ業者か怪しい業者であるとみてください。

ほんとうに、防音に対してプロフェッショナルな感覚をもっている施工業者なら、その人とお客様の耳で判断をする。

ということを第一に考えます。

防音は、難しい建築のテーマ

ではなぜ、騒音系を一つの工事の指針にする業者が多いのでしょうか?

それはとても簡単な理由です。

完璧な防音工事(パーフェクトサイレンス)を達成するのがとても難しく、特にライブハウスのような轟音を出す施設ではそもそも100%防音が不可能であるからなのです。

まず、ライブハウスや大きな音を出すビジネスをしようと考えている方は、これを理解してください。

もう一度書きます。

ライブハウスの防音は不可能。
100%無理ゲーです。

ライブハウスで防音工事はできない。

まずこれを理解した上で、どういう解決法があるか考えてください。

話を戻します。

なぜ騒音計を使うのか?

ということでした。これは、今説明した通りです。ライブハウスでの防音工事を始めパーフェクトサイレンスを達成するための防音工事は現実的にはいろんな問題があり不可能であることが多いだからです。

そのほかにもライブハウス以外にも防音が不可能な案件というのは多数あります。そういった中で、防音工事をすることによってある程度の音量自体を下げることはできるのは事実です。

ただ、音量は下がっても、音が聞こえてしまう(パーフェクトサイレンスにならない)ので、工事業者は騒音計を使って

「〇〇デシベル音量が下がりましよ。だから、1000万円くださいな。」

というような事務的なフローが発生してしまうということなのです。

防音・音の特性について基礎を知ろう!

いろんなサイトで紹介されていますが、一応このサイトが初めての方もいるかもしれませんので防音の基礎中の基礎をここでご紹介します。

防音とは、3つの方法の組み合わせで行います。逆にいうと、どれかが欠けると防音にはなりません(厳密にいうとこの三つの方法に、それぞれのその他二つの要素も含まれていますが、比重が違う)

防音に必要な三つのアプローチ

  • 遮音
  • 吸音
  • 制振

以上です。下に行くほど難易度があがり、コストがあがります。特に、ライブハウスなどの轟音を出す施設に関しては、制振という対策が必須になってくるので、かなり予算がかかってしまいます。

一つづつ解説していきます。

遮音とは何か?

読んで字のごとく。

音を遮ることです。

例えば、音がうるさかったら耳を反射的に塞ぎますよね?これが遮音です。

(この耳を手で塞ぐ動作には厳密には吸音と制振も含まれていますが、遮音の割合が多いので遮音とします)

遮音という防音は一番簡単で単純に音の発生源の周りを何かで囲んで音が外に出ないようにするということです。

極端な言い方ですが、スピーカーがあったとして、それをダンボールの中に入れたら、いくらか音が小さくなりますよね?これは遮音の原則的な原理に基づいているからです。

ポイント

防音の要素で一番簡単なのが遮音。

建材も安くかんたんに手に入るものも多く、初心者でも手を出しやすい方法です。

吸音とは何か?

吸音とは音を減衰させることです。音というのは発生源から直進し何か遮蔽物(遮音)に遮られるまで進みます。その際に、遮蔽物にあたると、反射して別の方向へ直進します。

これが、物の材質によって反射する率が変わってきますが、硬いものほど、大量の音を跳ね返すことになります。

つまり、コンクリート打ちっ放しの空間があるとします。

そこで、音をだすと音は反射を繰り返し減衰することなく無限に空間の中で跳ね返ります。とてもうるさく感じます。

この対策がされていないライブハウスやスタジオはとても多いです。たまに現場でみたときに、心配になりますが・・・

吸音とはこの反射をへらすことで音の量を減らすということです。

どうすればいいかというと、遮音により跳ね返された音の先に、柔らかいものを置く(吸音材)ということになります。

音は硬い素材だと跳ね返りますが、柔らかい素材だと跳ね返らずにそのまま、その材質の中をすり抜けていきます。そうすると、すり抜ける際に音のエネルギーがどんどん小さくなり音は小さくなります。

布団にくるまって歌を歌うと布団の外に聞こえる音は小さいですよね?

これは音が吸音されているためです。

ポイント

吸音に関してはテクニックが必要です。吸音材を配置する場所を間違えると、うまく機能しません。また、吸音に関しては材料がいいものを使うと高い点や、スペースをかなり必要とするので、初心者には手を出しにくいテーマです。

制振とは何か?

音は振動で伝わります。これが、一番音を遠くまで飛ばします。詳しい説明は別の記事で書きますが、単純に考えてください。

低音ほど振動を生みます。

つまりライブハウスのような低音を多数出す施設は制振による防音が必須条件となってくるというわけです。

ただ、制振という防音対策はとても難しいのが現状で、とても費用がかかります。

理由としては、振動を抑えるために圧倒的な質量が必要になります。

例えばライブハウス上野Untitledは制振するために、5トンくらいの建築素材を使っています。

5トンです。

500キロではありません。

防音工事の内装建材で一番スタンダードで使われるのが石膏ボードです。

ホームセンターでも石膏ボードは購入することができますが、この石膏ボードがほとんどの施設で防音構造のベースとして使用されます。(上野Untitledも使用しています。)

ホームセンターでも簡単に手に入る石膏ボードで、よく使われるのが「12.5mm」と言われるものですが、1枚の重さが14キロほどになります。

3トンの重さとなると、この石膏ボードが、300枚以上必要になるという計算になります。

ホームセンターなどにいってもらえればわかりますが、軽トラなどがレンタルできます。

>

ホームセンターコーナンやロイヤルホームセンター、ビバホームなどは購入者に軽トラを無料で貸してくれます。

だいたい軽トラをレンタルする際に注意されるのですが、300キロ以上載せないでくださいとか。

まあ、それくらいの重量運搬制限がかかります。

5トンのものを運ぶ

となると、10往復以上の防音資材の運搬作業が発生します。

ただそれだけで、圧倒的な運搬費用と労力がかかってしまうのです。

ただ、一つ言えることはライブハウスのような轟音を出す施設で、制振作業を怠って、数百キロ程度の建築資材で防音をすることは不可能です。

なので、ライブハウスなんかをやりたいと思っている方はまずこれを理解しましょう。

ただ、これに対してはいろんな考え方やアプローチで改善して実現につなげて行くことは可能ですので、記事を細かく分けてどんどん説明していきたいと思います。

ポイント

制振を怠って壁や床の振動で漏れている音に関しての音量感は残念ながら騒音計で測定することはできません。そして、その音がもっとも、人間が煩わしいと感じる音の種類であったりもします。

で、防音ってどうしたらいいの?

防音の基礎を理解した上で、どういう方法が本当の防音工事であると言えるのか?これから、説明していきたいと思います。

結論から言います。

防音の成果は機械の数値ではなく自分と関係者の耳が決める。

これが全てです。

例えば、ライブハウスを起業したいと思う場合。

その不動産を所有しているオーナーさん。そして、そのライブハウスに隣接しているテナントや住居。そして、店の外

これらの要素を全て確認して、その該当者たちが

「この音漏れなら問題ないですよ」

という合意がとれれば、それでOKだということなのです。

「騒音計で〇〇デシベルさがったらからOKですよね?」

とはならないということなのです。

つまり、判断するのはその人の耳ということになります。

これを間違えて、機械での防音数値に頭をとられ、防音工事業者に工事を依頼すると、1000万円以上しはらったのに、近隣とのトラブルが絶えない・・・

のような地獄の構図になってしまいます。

なので、ライブハウスのような大きい音を出す施設に携わる場合は上で紹介した3つのポイント

  • 不動産のオーナー
  • 近隣、隣接テナントや住居への対応
  • 店の外(公道など)への対応

この三つに対して、音を減らす対策を取りましょうということです。これを理解するだけで、防音する上でやるべきことや対応する順番などは大きくかわってきます。

できることとできないことを認識しよう。

なんどもいますが、ライブハウスの防音は無理ゲーなんです。

上記に三つポイントをあげましたが、大前提として、ライブハウスの防音は音の特性から考えて無理ゲーです。どういうことかというと

隣接するテナントや住居に一定数の音がいくらからは漏れてしまう

ということで、それをどれだけ工事を頑張ってもゼロにすることはほぼできないんです。

これが、できない理由として一番大きいのが制振工事の限界

ということがあります。ライブハウスの場合、制振工事をしなければ防音することが不可能ですが、制振工事は場所と費用と質量がかかるので、物理的な限界値というのが見えてきます。

壁は増やせばどんどん重くすることができますが、その分狭くなります。

振動が確実になくなるまでライブハウスの壁を増やし続けたら、客席がほとんどなくなってしまいます。

ライブハウスの広さであったり、お店自体の構造であったりとを両立させていかないといけないので、どちらかを諦めないと不可能になる無理ゲーになるのです。

当然ならが、ライブハウス上野Untitledはお店の構造や広さを優先しているので、近隣にいくらか音が漏れている状態で営業をしています。

これが、上野Untitledの防音工事です。

防音工事は無理ゲー

音が漏れているのに防音?ておかしくない?

確かにその通りです。ですが、何度も言うようにライブハウスの防音工事は無理ゲーなのです。

僕も最初はそれが可能であると思い、パーフェクトサイレンスを目指して資金を投じて防音工事に勤しんでいることがありました。

思えば、壮絶な時間と労力の無駄でした。

ある時、これは無理ゲーである

と気がつき、考え方を変えました。

どうすれば、近隣の方がOKをだしてもらえるか?というところに重点を置いて、それに対しての防音施工をどんどん行って行ったのです。

結果、今の上野Untitledは近隣の方と折り合いがついた状態で営業しており、何か大きな問題が起きていることはありません。

つまり、防音工事をする際に、一番大事なこと

音を出す周りがどのような環境であるか?

いうことが一番大切で、これを対応しにくい物件だとトラブルが絶えず、ライブハウス設立に投資した資金が無駄になる可能性が高いということです。

具体的な例を一つ示します。

上野Untitledは地下テナントですが、上階に住人が住んでいます。その際に、地下で大きな音を出して、上階でどういう音が漏れているかを立ち会いのもと確認しました。

そのあとに何度も試行錯誤、トライアンドエラーを繰り返し、最適な防音対策を考え、これくらいだと生活に支障が出るがこれくらいだと時間制限さえしてもらえれば問題ないですよ

みたいな落とし所を決めたのです。

シンプルに原因に、それに対して特化した防音工事を進めて行くのみ。遮音なのか、吸音なのか、どういう音がもれているのか?

なんの音を小さくしたいのか?

このようなところをしっかり把握して、それに対する解決策を見つけて行く

これが本当の防音工事になります。

騒音計でマイナス20デシベルを達成しても上の住人が気になるから困るといえば、意味がないんです。

音のうるさい・うるさくないを判定するのは機械ではなくて耳です。

実際に聞こえる漏れる音が有害か無害かを判定し、無害な音しか漏れないように試行錯誤していく。

防音工事はこういうアプローチが一番大切です

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