ライブハウスUntitled 機材関係

ライブハウスの無観客配信は儲からないという話

儲からないライブ配信を強いられたライブハウスの辛い現実

コロナが2020年から始まって以来、ライブハウスはおそらく、ビジネスとしては戦後最大級の落ち込みを見せるようになりました。

多くのライブハウスが閉店し、そして、理不尽なルールを課されて業務を変更せざるを得なくなりました。

コロナ蔓延から1年以上経ちましたが、2020年10月現在でも、ビジネスとしては全く儲からなくなってしまって、高い家賃だけ払わせられ続けるという、拷問のような仕打ちが未だに続いています。

別記事

そのコロナの中で、突如ライブハウス業界に生まれたのが無観客ライブ配信という謎の流行語です。

この記事では、謎の風評被害と暴力で業務転換を突然強いられたライブハウスが無観客ライブ配信を行わざるを得ない中で、いかにそれが大変なことなのかをご紹介したいと思います

ライブハウスで行う無観客ライブ配信が儲からない8つの理由

  • そもそもライブハウスは、動員をすることで収益をあげる
  • 配信機材を整備するには100万単位での投資が必要
  • テレビの様な動画を配信するには複数のカメラとオペレーターが必要
  • アマチュアが有料配信をしてもチケットがプロの様に売れない
  • アマチュアはリアルに会える事がステータスの一つで配信と相反する要素
  • アマチュアが行うライブ配信に期待値が低い
  • ライブハウス自体がライブ配信の会場としてミスマッチで予算が合わない
  • ライブ配信で活動したいと思うアーティスト自体が少ない

では、一つ一つ解説していきます。

そもそもライブハウスは動員をすることで収益をあげるビジネスモデル

ライブハウスの売り上げのお話

ライブハウスの売り上げは原則

ホールレンタル代金+ドリンク代

から生まれます。

ホールレンタル代金はチケット代(参加費、ノルマだったりもする)から発生するケースがほとんどです。

アマチュアアーティストのライブのチケット代金

1000−2000円前後が多い
それプラス来場者1名につき1杯600円程度のドリンク代

→つまり、客単価1500円から3000円程度のビジネス

ライブハウスによっては、動員人数は保障されていたり、されなかったり様々。

動員人数の保障をアーティストに求める事を「ノルマ」といいます。

実際のアーティストや企画の参加者のレベルにもよりますが、1日のライブイベントで20名だったり、50名だったり来場が発生します。

では、ライブハウスでアーティストがリアルライブではなく、無観客配信を行った場合、この人数がそのまま配信にスライドされるか?

というと

答えはノーなのです。

ここに、ニーズと現実の需要のミスマッチが発生しています。

何も知らない人達は、

ライブ配信の方がたくさん人がくるんじゃないの?

と思いがちですが、それは違います。

  • もともと、ライブ配信にお金を払う価値を見出していない人がまず多いという事。
  • 1000円とか2000円払ってライブを見たい!と考えてる人は少数であるということ

が主な原因です。

何も事情を知らない人からすると、ライブ配信は世界中の顧客にアプローチできるので、儲かりそうな美味しい話に見えそうですが、現実は反対。

中規模や小規模のライブハウスの配信は全く儲からないのです。

配信機材を整備するには少なくとも100万単位での投資が必要

ライブハウスがライブ配信をやる問題点の中で一番最初にあがるのが、配信機材問題です。

ライブハウスとしては、入場料が家賃になりますので

普段2000円のチケットで営業していたのに、ライブ配信だと500円

みたいな感じになってしまっては困ります。

配信のチケット代がホールレンタル代になるわけですし、むしろ、ドリンク代がない分、高くしたいくらいです。

しかし!

2000円のアマチュアのライブ配信にお客様がリアルライブと同じくらい満足度をえられるか?

というと、まずそうはならないというのが、現状です。

となると、ライブハウス側は、

配信機材のクオリティなどを高めて、少しでもお客様の体験をいいものにしないと・・・

みたいな使命を請け負うわけで、

ある程度のランクの機材をそろえよう・・・

となってきます。

  • カメラで20−30万
  • スイッチャーで10−20万
  • パソコンで20−30万
  • その他備品やケーブル、モニター

そこで、定番の機材をテンプレ通りに揃えるとあっという間に100万。

そして、Nuroのような高速なネット回線が必要なわけです。

ただでさえ、コロナでお客様がが減って儲からない状況にも関わらず、ビジネス的には圧倒的デメリットしかない配信機材への投資を多くのライブハウスが迫られる形になってしまったのです。

上野Untitledが儲からないライブ配信に投資をした機材の一例

ソニー 一眼レフカメラ α7C 24万円弱

動画撮影をするニーズが増えている事でソニーが開発した一眼レフカメラ。

通常の一眼レフは30分以内でしか録画できない場合が多いが、この1眼レフは長時間の撮影が可能

ソニー ビデオカメラ Z-90 30万弱

ワンランク上のyoutuberが使うビデオカメラ。

ライブハウスのミキサーから出力される太いケーブル(バランスケーブル)での入力ができて、ミキサーから直接音声をビデオカメラに送ることができて、ライブハウスの配信では必須アイテム

ローランドのスイッチャー V-8HD 28万弱

複数のカメラを切り替えるためのスイッチャーです。HDMIで簡単に入力できることから、複数のカメラを使うライブ配信機材のスタンダードになりました。

昨年は配信ブームで、この機材は3ヶ月以上の入荷待ちなどになっている状態でした。

MacBook Pro 30万弱

配信するために、安定した処理を行えるパソコンが必要不可欠で、もう少し安い価格帯でもライブ配信自体は可能ではありますが、お客様からお金をもらって配信を請け負う以上、処理能力の高い安定したものを使わないといけないので必然的に高いパソコンが必要になります。

ミドルクラスで揃えてこの値段です。

安いものではありません。

見てどう思いますか !?

実際、1年経った今現在、上野Untitledでは、この配信機材に対する投資金額は回収できていません。

大手のテレビや制作団体クラスの動画を配信するには複数のカメラとオペレーターが必要

テレビ局での撮影シーンなどを見たことがある方は、わかるかもしれません

カメラを複数台数利用したりすると、当然その分人手が必要になります。

アーティストに

動かないでください

といって、定点で撮影するケースもありますが

そうするとお客様の満足度は下がり、チケット代に見合わない配信になります

基本的に、テレビ番組の音楽番組を見慣れている人間からしたら

顔のアップがあったり

カメラがアーティストを追いかけるのは当たり前。

それに似たような演出をしようとすると

ライブハウス側は人を用意しないといけません。

ただでさえ儲からないビジネスなのに、さらに人を雇わないといけない

という事態が起きてしまっているのです

アマチュアアーティストが有料配信を行ってもチケットがプロのように売れない

ではアマチュアのアーティストに、

動員ライブをやめてライブ配信にしてください

とお願いをしたとして

普段と同じだけライブのチケットは売れるでしょうか?

カメラをたくさん用意し、配信の音質も上げ、できるだけにテレビに近い臨場感をだします!

といえば、お客様はチケットを買って見てくれるでしょうか?

答えは

ノーです

実際に見る人は、普通にライブに来る場合に比べて、半減、いや激減することがほとんどなのです

動員ライブで20名動員できたグループが配信だと3名分しかチケットが売れなかった

みたいなケースが多発しています。

ここに、一つの原因があります。

  • B’z
  • 朝倉未来
  • サザン
  • 乃木坂 etc.

ライブ配信で、ものすごい売り上げを叩き出しているアーティストはいるのはご存知の通りです。

なのに、なぜ?

アマチュアアーティストの配信チケットは売れないんでしょうか?

この人たちとアマチュアアーティストの決定的な違いはなんでしょうか?

答えは簡単です

  • メジャーのアーティスト達のチケットはもともと普段のライブから取れない
  • 日本中にファンがいて、遠方でライブに参加するのが難しい

という二つの要因が常にあるからです。

そういう人たちが配信を行えばチケットが売れるのは当然です。
むしろ今まで見れなかった人がみれるようになるので、売り上げは上がるのは自然な流れ。

しかし、それと、同じ価値観をライブハウスやアマチュアアーティストに押し付けて

panda

お前らも配信でしばらく大丈夫だろ!

と一方的に強要するのは、やはりおかしいとお思います。

アマチュアアーティストはリアルに会えることがステータス 配信とは相反する要素

アマチュアアーティストはそもそも、ファンが全国にいるわけでなく身近なところにいるケースがほとんどです。

そして、その大半が仲間であったり、友人であったりします。

ライブの動員というのはそういう友達や仲間達が、

近況報告や顔見せをかねて、話したいから遊びに行く

といったニーズによって成り立っていることがほとんどです。

それを

ライブ配信を有料でするから、買って見てくれ

と急に言われても、友達や仲間からしたら金銭的な援助をしてあげようという意思でもない限りはメリットがなく、チケットの購買へのモチベーションが上がらないのは当然といえば当然です。

そもそも、アマチュアアーティストが行うライブ配信に期待値が低い

そもそも、アマチュアアーティストのファンは、アーティストに対して、配信をしてほしいとそこまで期待していません。

なぜなら、先ほど説明した様に

熱狂的なファンというより友達感覚なケースが多い

からです

熱狂的なファンの場合は、

リアルで会えなくても配信でも顔を少しでも見たい

という心理ですが、

友達などの場合は、

また、コロナ落ち着いたら見に行くわ。しばらくは我慢やな。

みたいなマインドになるわけです。

ライブハウス自体がライブ配信の会場としてはミスマッチで予算が合わない

そして、そもそもの問題点ですが、ライブハウス自体がライブ配信を行う事に対してオーバースペックな状態であることも問題です。

上野Untitledは100名以上の収容キャパのあるライブハウスです。

当然、これくらいの広さになると家賃はかなり高くなります

ですが

100人ライブハウスに呼ぶことができるので、そのチケット代で高い家賃を払うことができるのです。

これが配信と家賃のミスマッチに繋がります

どういうことかというと

キャパが30人のライブハウスでも、100名キャパと同じライブ配信ができてしまいます。

となると、家賃が安い方が、配信のチケット代を安くすることができるので価格競争で圧倒的な優位性が生まれます。

仮に100枚チケットを売れるアーティストがいたとしたら、利用代金が高い大きなライブハウスで配信するより、利用代金が安い30名しかキャパのないライブハウスで配信した方がお得なわけです。

このように、突如、市場に降って湧いたライブ配信は、原則広さベースで設定されていたライブハウスの価格相場を崩壊させて、家賃と相場のミスマッチを引き起こす形になっています

安い配信機材でライブ配信することは可能なのか?

では、機材をコストダウンするという選択肢はあるのでしょうか?

という問題ですが、実際、いくらから安い機材を選ぶ事によって初期投資を抑えることは可能ですし、それをしているライブハウスもたくさんあります。

しかし、そうすると

  • 配信が安定しない
  • カメラが少ない
  • 画質が悪い

などの問題がついて周り、あまり事故のリスクを取りたくない利用者からすると敬遠する材料になってしまいます。

ただでさえ、ライブ配信という技術自体がまた、新しく不安な要素も多いので

配信する側はやはり、安定を望みます。

そして

圧倒的に配信ライブで活動したい人が少ない

というマーケットの中では

配信機材が安いものだと単純に競争に勝ち残れない

という命題がついて周ります

ライブ配信で活動したいと思っているアーティスト自体が少ない

そして、何より問題なのは

アーティスト自体が

配信であれば見送り

と考えている人が圧倒的に多いという点です。

B'zの稲葉さんも、動画この点に触れており、コロナ初期の時点ではまったく配信ライブに関してはやる意思がなかったと発言しています。

39分あたりから、コロナでのライブ活動について話しています

アマチュアアーティストも同じで、

チケット多分、売れなくて儲からないからやめよう

とか

配信にお金かけるなら、コロナが収まってからお金をかけてライブしよう

という考えの方が圧倒的に多いのいうのが現状です

配信のニーズはライブハウスより、自宅にあり儲からない。

そもそも、ライブ配信という発信方法のニーズとトレンドはライブハウスから行うより自宅から行う方にあります。

コロナ渦中におきたことは、B’zであったり、星野源であったり、多くのアーティストから家庭から音楽を届けたことでした。

自宅から音楽配信するきっかけを日本に広めた1本

そして、アマチュアアーティストもそれに続きました。

そういうニーズの中で、わざわざライブハウスまできて配信するメリットというのはアーティストにはなかなかないのです。

なぜ、メリットがないかというと、それは

ファンであるリスナーがそう望んでいるからで

アーティストからの発信がライブハウスからの高音質なものでなくても

スマホや家のカメラで簡単に撮影したもので出る音質でもどちらでもいい

という答えをだしたことが原因です。

例えば、星野源がうちで踊ろうをアップした際に

音質が悪いからライブハウスでやってほしい

という意見をだしたファンは皆無でした。

むしろ、あの自宅からの音源が全ての配信音質の基準となりました。

この時、多くのアマチュアミュージシャンは

これで良かったのか!

という答えをもらったんです。

この時点で、ライブハウスの配信需要というのは一気になくなってしまったのです。

ほぼ、ファンが楽しめる配信コンテンツから自宅からのクオリティで完結しまう

それが、コロナによって確立し、そのマーケットにライブハウスが高音質配信やマルチカメラ配信で参加しても、ビジネスになるほどの需要は生まれなかったのです

ライブハウスでやるメリットは爆音が出せることのみ

となると、ライブハウスで演奏するメリットというと、大きな音を全力でだせることぐらいで、これはアーティストにしか恩恵がありません

爆音で演奏しても配信だと音源は圧縮され、そのライブ感というのは配信で表現するのはなかなか簡単なことではありません。

さらに、大きな音をだして配信するのであれば、高いライブハウスを使うより、広めのリハーサルスタジオを使う方が安上がりだったりもします。

値段も1/10程度くらいで利用できると思います。

高い値段をだしてまで、ライブハウスで配信するメリットがほとんどアーティストにはないのです。

結果、コロナ渦中におきたのは、ライブハウスの配信利用による泥沼の値下げ合戦でした。

しかし、多くのライブハウスが同じであると思いますが、たくさんの人をいれることで高い家賃を払っているわけです。

リハーサルスタジオと同じ値段まで、下げてしまっては家賃を払うことができません。

結果、このような負のスパイラルがライブハウスの数多くの閉店につながったと考えられます

参考記事

これから先、アフターコロナの世界でライブハウスの配信はどうなるのか?

アフターコロナの世界で、ライブハウスの配信というのはどうなるんでしょうか?

これからは、ライブと常にセットで配信の設備がライブハウスに求められる時代がくるのでしょうか?

僕個人的には

アマチュア向けのライブハウスでは、これはない

と考えています。

なにより、設備と人材に費用がかかるため、アーティストがそれなりの使用料金でも払わない限り、儲からないからです。

そして、アーティストがライブハウスからわざわざ配信をしたがることも、おそらくこの先減って行くと思います。

アマチュア向けのライブハウスとメジャー向けのライブハウスでは用途が違うということが大きい。

我々のようなメジャーになる前のアーティストを扱う施設では、アーティストとお客様のリアルな交流(メジャーではありえないこと)に価値がある

メジャーのアーティストを扱うライブハウスだと、これから先も配信の設備は整えられていくかもしれません。

チケットがソールドアウトで取れなかった人や遠方の人たちも自分の好きなアーティストの公演がオンラインで見れたら嬉しいですよね。

この二つの考えから共通して導ける答えは

ライブ配信というものは、

ライブハウスの代わりになるものではなくて、その機能を補完する一つの要因にしかならない

ということだと思います

結論 僕はライブ配信は小規模ライブハウスには不要という考え

よって長くなりましたが、中規模、小規模ライブハウスでのライブ配信ビジネスというのはおそらくこれからは衰退して行くであろうと思います。

それは、中小規模施設の場合は、投資に対してのリターンの期待値が低く儲からないからです。

もし、あり得るとしたら家賃の安い場所などで、配信専用のスタジオなどができたりして、それに特化して営業をしていくというビジネスなんかだったらありかもしれません。

どちらにしろ、僕のライブハウスは、

お客様とアーティストがリアルに交流できる場所

早く本来の位置付けに戻る日が来ることを願っています。


ブログ運営:el music entertainment

ブログ:el music blog.

2013年、派遣アルバイトで貯めたお金で、たった一人でライブハウスを設立。そこから、紆余曲折を経て、様々な音楽やアーティストに関わる事業を展開しています。ライブハウス、音楽スタジオ、レコーディング、アイドル、撮影スタジオ、独立開業、防音工事、楽器や機材、事業に関わる様々なお話。

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